2021年9月25日

DDS(Direct Digital Synthesizer)ユニットにLPFを設置

先日工作したDDSに、アンチエイリアシングフィルタを追加挿入しました。
DDS基板には元からカットオフ10MHzの7次LPFが挿入されていました。また、その特性インピーダンスが200Ωとなっていましたので、DDSの出力インピーダンスを50Ωとして、特性インピーダンス50ΩのLPFに組み替えることにしました。

■LPF仕様
カットオフ周波数 : 60MHz
特性インピーダンス : 50Ω
フィルタ形式 : 5次チェビシェフ、 リップル0.5dB

60MHz_chev_cir.jpg
青色の素子値は設計値です。
これをE12系列で入手可能な素子値にしたのが赤色のものです。
Filter_chara.jpg
青色のグラフが元の設計値特性(計算値)です。
赤の特性は素子値を変更したものの特性で、素子値をそれぞれ5%程度大きくしたため、特性そのものに大きな変化がなく、カット負周波数が5%程度低くなった感じです。

コンデンサは手持ちのセラミックコンデンサがあったのですが、インダクタは市販のものを購入すると時間がかかるので、空芯コイルを手巻きで作りました。
手巻きコイルの製作(測定)方法は、前回のブログを参照してください。

5th_Chev.jpg

Nyquist.JPG
これはアンチエイリアシングフィルタがない、50MHz出力時のスペクトラムです。

50MHz_sprious500.jpg
これがフィルタを挿入時のスペクトラムです。だいぶおとなしくなってくれました。

10MHz、50MHz出力時の広帯域スプリアス(~2GHz)の様子です。

10MHz_sprious2000.jpg
50MHz_sprious2000.jpg
フィルタの特性を簡単に実測できないので、バラック実験で途中になっているトラッキングジェネレータを早くくみ上げようかと考えています。

2021年9月22日

空芯コイル製作のための、リアクタンス測定

フィルタの製作を考えており、コンデンサはそれなりの容量値のものが手元にあるのですが、コイルのストックはあまり無く、通販でも満足に入手できません。
そこで昔ながらの『手巻きコイル』を作ろうと思うのですが、インダクタンス値を測れる測定器がありません。手持ちの機器を使ってリアクタンスを測る方法を考えてみました。

R-L(R-C)直列回路に交流信号(Rs)を接続し、各部の波形(振幅、位相)を2chオシロスコープで観測することでリアクタンス値を求める方法です。
180nH.jpg
回路に流れる電流は一定である。また抵抗値は既知であるとする。
Vr振幅とVx振幅は抵抗値、リアクタンス値に比例するため、Vr振幅とVx振幅を測定することによってリアクタンス値を求めることができます。
ただし通常のプローブはシングルエンド測定用なので、抵抗の両端をプロービングすることに戸惑いがありました。

共通のグランドで測定できるVsとVxからリアクタンス値を求める方法にしました(VsとVxからVrを求めることもできますが...)。
観測した交流信号(ここでは10MHz)のVsとVxの間には位相差が生じます。リアクタンスが誘導性の場合、Vxは位相進みとなります。
どれだけ位相が進むかでリアクタンス値を計算することができます。
欲しいインダクタンス値は180nHです。180nHの10MHzでのリアクタンス値:Xlは11.3Ωになります。
 Xl = 2πfL= 2x3.14x10x10^6x180x10^(-9) = 11.3 (Ω)
抵抗に11Ωを使用すると、VsとVxの位相角はほぼ45°となります。45°付近が素子値の変化に対する位相の変化が大きく、素子値を追い込みやすいためです。
要求する位相角:θは、
  θ = tan-1(R/X) = tan-1(11/11.3) = 44.2 (°)
となります。
ここでtan-1は、アークタンジェントの事です。
位相進み時間:Δtは、10MHzの一周期時間:100nsが360°に相当するので、
  Δt = 100(ns) x 44.2/360 = 12.3 (ns)
となり、VxがVsに対して12.3ns進んだ波形が観測できれば、リアクタンス値が11.3Ωとなり、180nHのインダクタンスが得られたことになります。
測定の様子です。
2021_09_19_IMG_9161.JPG
180nH_phase2.jpg
空芯コイルの粗密を調整し、希望のインダクタンス値を得られます。

-コンデンサの場合-
リアクタンスが容量性の場合、Vxの位相は遅れます。
同じ条件で、リアクタンスに1200pFのコンデンサとしたときの様子です。
1200pF.jpg
この時の遅れ位相:θは、
  θ = tan-1(R/X) = tan-1(11/-13.3) = -39.6 (°)
となります。
位相遅れ時間:Δtは、
  Δt = 100(ns) x -39.6/360 = -11.0 (ns)
となります。

1200pFのセラミックコンデンサをリアクタンスとして接続し、観測した時の様子です。
1200pF_Phase.jpg
-11.0nsに対して観測値は-11.5nsとなっています。
セラミックコンデンサの1000pF以上では±10%の誤差がありますので良い値です。

抵抗、リアクタンスは純粋なものとし、端子間容量、直並列抵抗等の要素は無視しています。
数十MHz程度で使用する分には十分かと思います。

2021年9月16日

DDS(Direct Digital Synthesizer)をケース収納

周波数カウンターを製作し、以前に真空管受信機の調整に使用していたDDS(Direct Digital Synthesizer)方式の信号発生器があったのを思い出し、引っ張り出してきました。
15年以上前に、ウエーブ電子というところでキット販売されていたWH-002A-1というDDSで、バラック状態で使用していました。

今回これをケースに収納し、動作チェックを行いました。

WH-002A.JPG
DDSの心臓部には、アナログデバイゼスのAD9851を使用しています。

AD9851.JPG
このデバイスは、内部に基準クロックを6逓倍する機能があり、外部クロックに30MHzを使用するとサンプリングレートが180MHzとなり、ナイキスト周波数以下(<90MHz)の正弦波を発生することができます。
本ユニットでは1Hzから50MHzまで、1Hzの分解能で出力できます。

1.ケース加工と実装

ケースは周波数カウンターに使用した、タカチのSY-150Gを使用します。
パネルのレイアウトを作図し、ラベルシールに印刷したものをパネルに張り付け、穴あけ加工しました。

パネル穴あけ.jpg
穴あけ加工が終わり、フィルムラベルシールにレタリング印刷しパネル部品を実装しました。

フロントパネル.jpg
ケース内部にDDS基板を実装し、内部配線を行いました。

内部.jpg
フロント実装.JPG
リアパネル実装.JPG
下が前回紹介した周波数カウンターで、上が今回ケースに収納したDDSユニットです。

DDS_COUNTER.jpg

2.調整

前回紹介した周波数カウンターを利用し、DDSユニットの基準発振器(TCXO、30MHz)を調整しました。
DDSの出力周波数を、10.000,000MHzに設定しカウンターの読みが10.000,000MHzに近くなるようにTCXOを調整しました。

TCXO_Adj.jpg

3.特性

■波形観測
出力周波数を、1、10、25、50MHzとしたときの出力波形です。

Wave_Form.jpg
D/A出力にアンチエイリアシングフィルタを挿入していませんので、このような波形になってしまいます。
50MHz<カットオフ周波数<90MHzとなるLPFを挿入すると、きれいな正弦波となりますので心配していません。

周波数が高くなると振幅が低下しているのが気になります。50MHzでは約3dB低下しています。

■スペクトラム観測
25MHzの出力信号を200kHzスパンで観察した近傍スプリアスの様子です。

200kHz_span.jpg
48kHz間隔で微弱なスプリアスが観測されます。DDSでは48kHzの信号を使用していないと思いますので、制御に使用しているPICマイコンからの制御信号タイミングまたは7セグ制御信号ではないかと想像しています。

位相雑音が通常の発振器に比べ妙に少ない、と言うか無いに等しいので、100kHzスパン、RBWを10Hzで観測してみました。

10kHz_offset.jpg
10kHzオフセットで-102dBc/Hzとなっており、スペアナの雑音を観測しているようです。DDSなので発振器と違い、側帯波雑音は発生しないようですね。

DC~2GHzのスプリアスを観測しました。

10MHz_sprious.jpg
50MHz_sprious.jpg
2GHzまでスプリアスが満載ですが、これがDDSというか、デジタル信号処理の特長です。
出力にアンチエイリアシングフィルタが入っていませんので、デバイス(D/A)の能力(正確には、D/Aコンバータ出力のsin(x)/xロールオフ特性により決定される)までエイリアスが現れます。
エイリアスの様子です。

Nyquist.JPG
この特徴を生かし、BPFを用意することで高い周波数の信号発生器として利用することも可能です。

4.その他

本ユニットは出力インピーダンスが50Ωとなっていません。100とか200Ωになっているようです。
これを50Ωに変更し、各種フィルターを準備しようかと思っています。

2021年9月13日

8GHz 8桁周波数カウンタの製作

スペクトラムアナライザ(8592A)用トラッキングジェネレータを製作すべく準備をしていますが、ついでに信号発生器を組み込もうと考えています。
そこで正確な基準発振器もしくはその発振器で校正された正確な周波数カウンターが必要になりますが、所有していません。
今回は、後者の周波数カウンターを製作することにしました。

1.構成

目標を次のように決めました。
・最大測定周波数 : >8GHz
・測定桁数 : 8桁
・計測誤差 : 1PPS信号で校正できる(100MHz未満の周波数)

目標値は事前に決めたというより、秋月電子通商で手に入る商品で構成できる周波数カウンターの構成を考えたら、上記目標値となりました。

ブロック図.jpg

■基本周波数カウンター部
秋月電子通商の8桁周波数カウンターキット、AE-FCOUNT3を使用します。
この周波数カウンターの計測範囲は、1Hz~50MHzとなっており、GPS信号から得られる1PPS信号により、基準信号12.800,000MHz信号を発生するVCTCXOの発振周波数を制御できます。
本キットは前段に配置されるプリスケーラの分周比を、本カウンターに設定でき、周波数の直読が可能です。

AE-FCOUNT3_kit.jpg
AE-FCOUNT3_sch.jpg
参照

■20分周プリスケーラ
秋月電子通商の8桁周波数カウンターキット、AE-MC12080を使用します。
AE-MC12080.jpg
本キットに使用されているプリスケーラは、オンセミコンダクタのMC12080です。
このプリスケーラの入力周波数範囲は、0.1~1.4GHzとなっており、1/10、1/20、1/40、1/80の分周比を設定できます。
基本カウンターの最大周波数が50MHzなので、1/20分周を選択することで1GHzまで計測できることになります。
ただし最低周波数が100MHzなので、50MHzから100MHzの範囲は計測できない懸念があります。
MC12080_Range.jpg
プリスケーラは差動入力の構成となっており、本キットでは負入力をグランドレベルにし、正入力ピンをシングルエンド入力として使用しています。
ブロック図を見ていただければわかると思いますが、ここでは負入力をグランドから51Ωで浮かし、50-1000MHzの計測入力ポートとして使用します。
MC12080.jpg

■8分周プリスケーラ
1-8GHzの信号は、Hittite(Analog Devices)のHMC363S8Gで1/8分周し、後段のプリスケーラMC12080に引き渡します。
HMC363S8G_1.jpg
HMC363S8G_2.jpg
HMC363S8G_3.jpg
参照

本デバイスはプリスケーラ単体での販売ですので、FR-4基板にカッターでパターンを作成し、実装しています。

■その他
ケースはタカチのSY-150Gを秋月電子通商で購入しました。
このケースはシールド構造ではありませんが、フロント、リアパネルが平板のアルミとなっており、ケース加工が楽です。

信号入力コネクタは、1Hz-50MHz(BNC)を除いてSMAとしています。
1PPS信号にSMAを使用したのは、手元に沢山あり小型であることが理由です。手持ちのGPSモジュールの出力にもSMAを使用しており、接続が楽であることももうひとつの理由です。

ACアダプタは、AD-B90P130(秋月)を使用します。9V、1.3Aと十分で、580円と安価でした。

2. 製作

■キット、基板製作
キットといっても表面実装部品はすべて実装済みなので、リード部品をいくつか実装するだけで簡単に出来上がります。

プリスケーラ基板は付属のSMAコネクタは使用せず、テフロン同軸ケーブル(潤工社 ジュンフロン 高周波同軸ケーブル DFS020)で直接接続しました。

8GHzプリスケーラ用基板はFR-4生基板にカッターでパターンを作成し、1608サイズのチップ抵抗、コンデンサを実装しています。

■パネル加工
パネルは、ラベルシール(A4判)に穴あけ加工図を印刷し、パネルに張り付けて加工しました。
加工図は、Visioを使用し寸法入力して作図しました。
パネル穴あけ.jpg

■パネルレタリング
パネルのデザイン(レタリング)もVisioで作成しました。
作図したデザインは、フィルムラベルシール(ツヤ消し・シルバー)にインクジェットプリンターで印刷しました。
パネルレタリング.jpg
穴あけ加工の終わったパネルに、印刷したフィルムを張り付けて、穴の開いている部分をカッター等で切り抜いていきます。
パネルレタリング2.jpg
加工が終わり、コネクタ、スイッチ類を取り付けた状態です。
パネル完成.jpg

■基板実装、配線
ケース(プラスチック製)に基板取り付け用の穴をあけ、基板を実装し配線を行います。 実装、配線後の内部の様子です。
完成inside.jpg
Prescaler.jpg

3. 調整
GPSモジュールからの1PPS信号(正確な1Hz繰返しパルス)をカウンターのGPSポートに接続し、内蔵のVCTCXO(電圧制御型温度制御水晶発振器)の発振周波数を電圧制御で調整します。
このカウンターにはこのモードが設定されており、12.800,000MHzに調整します。 このTCXOは±3ppmの物で、12.8MHzに対して38.4Hzの誤差がありますが、1Hzの誤差まで追い込むことができます。(調整した瞬間は....)
Adj_1PPS.jpg
TCXOと言えども温度には敏感なので、蓋をした状態で調整できるように穴をあけています。

4. テスト

■1Hz-50MHzレンジ
スペクトラムアナライザに設置されているキャリブレーション用信号を測定してみました。
HF_25MHz.JPG
カウンターの値が正しければ、100Hz程度ずれていますね。

■50-1000MHzレンジ
このレンジの不安は、50-100MHzがプリスケーラの不感レンジで動作に不安があります。
残念ながら手元にこの周波数範囲の正弦波を出力する発振器がなく、試験ができませんでした。
矩形波ですとプリスケーラの感度が高い3倍高調波を計測してしまいます。
上限周波数の1GHzで試験をしてみました。
Middle_1GHz.JPG

■1-8GHzレンジ
このレンジでは1/160分周していますので、最小分解能は160Hzになります。
1GHzの信号を測定した状態です。
信号源周波数が正確だとすると、カウンターのTCXOが2Hzずれていることになります。
High_1GHz.JPG
4.0GHzの信号を測定した状態です。
信号源側のTCXOの周波数を調整した時のものです。
check_4GHz.jpg
HMC363S8Gのスペックでは最小入力周波数が200MHzとなっているので、500MHzでの試験をしてみました。
High_500MHz.JPG
ただしこのレンジでの最小分解能は160Hzとなりますので、低い周波数での測定は不向きです。

5. その他

二段目のプリスケーラの最低周波数に不満があります。
適切なプリスケーラを探して、入れ替えたいと考えています。